地震列島の上に立つ原発の危険性
福島原発の炉心溶融と水素爆発に寄せて

 

2011年3月14日
土井淑平(ウラン残土市民会議運営委員)

 

 本稿は某紙への寄稿として執筆したものですが、同紙の事情により掲載できなくなったため、若干加筆のうえ本ホームページにて公開します。

 東北地方の太平洋沖を震源とするマグニチュード9・0の巨大地震は、あっという間に海岸線の市町村を飲み込むすさまじい大津波の襲来に加えて、東京電力の福島第1原発1号機と3号機で炉心溶融と水素爆発を相次いで引き起こし、大量の周辺住民の避難を余儀なくさせるなど、地震列島の上に立つ日本の原発の危険性を白日のもとにさらした。
  周知のように、原発の重大事故には炉心溶融と暴発事故の二つのタイプがある。最初の炉心溶融は一九七九年に米国のスリーマイル原発で発生したが、冷却水の喪失で原子炉がカラ炊き状態となり、核燃料棒を束ねた炉心の四割強が溶融し、水素爆発で放射能を広範囲に飛散させた事故である。その溶融した放射能が原子炉の底に落下することから「メルトダウン」ともいわれ、さらに地下へと潜り込んで地球の裏側の中国にまで突き抜けるとの比喩から「チャイナ・シンドローム」とも呼ばれる。
  一方、暴走事故は一九八六年の旧ソ連のチェルノブイリ原発で起きたもので、原子炉の暴走で瞬時に大量の放射能が吹き出すため「アポロ事故」の別名を持つ。実際、チェルノブイリ事故では広島原爆の八〇〇倍の放射能が一挙に原子炉から吐き出され、その放射能が折からのジェット気流に乗って地球を駆け巡り、大地・食品・家畜・人体の汚染で全世界をパニックに落とし入れた。旧ソ連とヨーロッパだけでも一〇〇万人のガン死が推計され、日本の大地や植物や母親の母乳からもチェルノブイリの放射能が検出されたほどである。
  今回の福島第1原発1号機と3号機の事故はスリーマイル原発事故に類似し、冷却水の喪失により露出した炉心の溶融に加えて、核燃料棒の被覆管のジルコニウムが水(水蒸気)と反応して水素を発生させ、その水素が原子炉建屋内で爆発を起こして建屋を吹き飛ばし、放射能を外部に放出した事故である。地震とともに自動停止した福島の7基の原発のうち、第1原発2号機と第2原発1、2、4号機も冷却機能が損なわれ、いずれも危険な状態にある。とりわけ、第1原発2号機は1号機と3号機の轍を踏む可能性があるので要注意だ。
  第1原発1号機と3号機の炉心溶融と水素爆発は序曲にすぎず、それらの原発の格納容器が現時点で損傷をまぬかれたとしても、@炉心溶融の進行がどのような結末に至るかAやはり冷却機能が損なわれている第1原発2号機と第2原発1、2、4号機は今後どうなるか、いずれも予測が困難である。加えて、B原発の敷地内にある猛毒の使用済み核燃料の保管プールの損傷や流出はないのか、報道も質問もまったくなされていないだけに不気味である。
  つまり、福島原発はいま薄氷を踏むような、とてつもなく危険な状況にある、と考えなければならない。二〇キロ圏内八万人の住民避難の措置では甘く、早急にもっと拡大すべきだ。一三日の時点でも被ばく者は一九〇人とされるが、それは氷山の一角にすぎまい。原発周辺では一般人の年間被ばく許容線量の年間1ミリシーベルトを、わずか1時間足らずで浴びてしまう異常な汚染である。すでに被ばくした住民を洗浄すれば済むというようなテレビの報道や解説も、鼻や口から放射能を取りこむ体内被ばくと晩発性障害を考えれば、あまりにひどく腹立たしいコメントである。
  福島原発周辺でのセシウムの検出は放射能の飛散の物的証拠である。しかも、福島原発の放射能が一二〇キロ離れた宮城県の東北電力の女川原発で観測され、東北沿岸海域に停泊して救援活動に当たっていた米原子力空母「ロナルド・レーガン」の甲板員が被ばくし、福島原発の北六〇マイル(一〇〇キロ)を飛行中の米軍のヘリコプターに放射性の粉塵が付着して洗浄が必要になった、などの情報がネットで伝えられているのは、汚染の広範囲な広がりを示すものである。政府や当局は東北地方に限らず日本列島の各地でくわしい時々刻々の放射能値を測定し、風向・風速のデータとともに隠さず速やかに国民に公開すべきである。
  これまで、原発の推進側は「何重もの防護」で原子炉が守られ、かりに原子炉の冷却水が失われても緊急炉心冷却システム(ECCS)が働くので大丈夫といってきた。だが、その「最後のとりで」のはずのECCSが、福島原発では非常用電源の故障でまったく働かなくなって炉心溶融が起き、あわてて海水を注入して冷却するという異常な事態となったのである。今回の原発事故で電源喪失に至った東京電力の計画停電も、危険な原発に過剰に依存しすぎた結果のツケである。
  とにかく、地震列島の上に立つ原発の危険性の認識があまりに甘かったことは否めない。それは今回の福島原発や四年前の新潟県中越沖地震に見舞われた柏崎刈羽原発だけでなく、わたしたちに身近なところでは、新たな活断層が見つかった中国電力の島根原発にも当てはまる。中国電力は山口県の上関原発もいったん白紙に戻して出直すべきではないか。


 

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