3月2日 毎日新聞「記者の目」について 



論評

17年間に及ぶ核燃と国の無責任への痛烈な批判を評価する
ただし、控訴審の和解案の蒸し返しはいただけない

― 3月2日付け毎日新聞・全国版「記者の目」
「鳥取・湯梨浜町のウラン残土放置」に寄せて―

2005年3月8日 ウラン残土訴訟を支える会
              土井淑平

1、鳥取県湯梨浜町(旧東郷町)方面(かたも)地区のウラン残土問題は、1988年の放置発覚以来、方面自治会が撤去を要求して今年で18年目(丸17年間)になります。だが、発生者たる核燃料サイクル開発機構(旧動燃)は方面自治会と撤去協定書まで交わしながら逃げ回り、つい最近になって最高裁決定により3000立方メートルのウラン残土の撤去が確定したにもかかわらず、方面地区からわずか500メートル先の麻畑地区のウラン残土堆積場にたらい回しで移して撤去命令をごまかそうとしました。
 このウラン残土問題における17年間にわたる核燃の無責任を痛烈に批判する取材記者の意見が、毎日新聞(3月2日)全国版の「記者の目」に「鳥取・湯梨浜町のウラン残土放置問題」と題して掲載されました。この記事は「不作為≠P7年・・・国は動け」「核燃、住民無視するだけ」などのサブタイトルで核燃と国の責任を問い、この問題に関心を持つ私の県外の友人・知人からも好評の声が寄せられました。
実のところ、今回の「記者の目」を執筆した記者が昨年11月29日と12月1日の2回、毎日新聞の鳥取版に掲載した核燃人形峠環境技術センターの黒沼長助所長の大々的なインタビューに接したときは、このインタビューは核燃機構の広告費で掲載されたものかと疑い、それが仮に記者自身の意図や意識になくとも、客観的に核燃機構の一方的なPRの場を提供したと考えざるを得ませんでした。それだけに、今回の「記者の目」の勇気ある率直な意見には、その後の地元の住民運動や鳥取県の県立自然公園条例による禁止命令などを十分取材された成果を見る思いがして、あらてめて認識を新たにしました。

2、私もまたこれから述べる控訴審の和解案についての一点を除けば、この「記者の目」の意見はウラン残土問題の本質をとらえた貴重な提言だと思います。その一点とは、終わり近くの国のイニシアティブの必要に関連して、「『放射線度の高い残土約290立方メートルの同センター撤去』を盛り込み、合意間際までいった控訴審での和解案を再検討する余地もあろう」と述べられた部分です。せっかくの勇気ある貴重な「記者の目」にあえて異議をはさんで恐縮ですが、この控訴審の和解案の蒸し返しはまったくいただけません。
なぜなら、この控訴審の和解案こそ、実は文部科学省の核燃料サイクル研究開発課の谷広太課長補佐が、2003年の控訴審の最中に国の仲介と称して乗り出し、方面地区の住民の意見を聞く振りをして、「290立方メートル以外の部分を持ち出す場合は、粉塵が大気に出るし水質も汚染する」「全面勝訴しても全部持ち出すことは無理だ。最終的に解決しないかも知れない」などと、誘導尋問のようなやり方で住民をかき回したり脅したりして、自治会側を丸め込んでまとめ上げようとした核燃機構サイドの骨抜き和解案≠セったからです。
この骨抜き和解案≠ヘ、私たちの「ウラン残土訴訟を支える会」のホームペ−ジ(http://homepage2.nifty.com/uran_zando/)において、それが核燃によって提起される以前にも以後にも、繰り返し警告し批判してきたところのものです。すなわち、まず控訴審の和解協議に入るに先立って、私たちはこの290立方メートルのみの撤去案が、もともと方面地区のウラン残土撤去運動を打ち消す西尾前県政時代の鳥取県当局と旧動燃幹部とのアリバイ工作の合作案であるとして、その危険性と反動性を警告しました(上記ホームページの2002年10月18日の「第1回口頭弁論」参照)。
そして、方面地区は村を2分するような騒動のすえ(上記ホームページの2003年3月の「方面自治会が「和解案」を拒否」参照)、自治会の総会決定で控訴審の和解案を拒否しました。その結果、控訴審判決で3000立方メートルの撤去命令という一審判決が支持されて、これが今回の最高裁決定で最終的に確定したのです。さきの「記者の目」の控訴審の和解案の再検討という提案は、国の介入で村を割られかねない危機に直面しながらも何とか一つにまとまり、最高裁決定で撤去を貫徹しようとしている方面地区の住民の気持を逆なでするものであって、とうてい受け入れることはできません。
いったい、いつまで時計の針を逆さに巻くような、後ろ向きの話を繰り返せばいいのでしょうか。控訴審の和解案の蒸し返しを喜ぶのは、麻畑保管案の頓挫でにっちもさっちもいかなくなった核燃機構です。核燃機構は290立方メートルのフレコンバック詰めウラン残土だけでなく、残り2710立方メートルのウラン残土も方面地区から撤去しなければ、制裁金を課せられるはめに陥っています。魯迅の言葉ではありませんが、水に落ちた犬は打たねばなりません。そうしなければ、この国の特殊法人はいつまで経っても自らの責任を自覚することはないでしょう。

3、かつての旧動燃の「もんじゅ」事故や東海再処理工場の事故で露呈したのは、「うそつき動燃」とか「動燃はどうなってんねん」と呼ばれたように、原子力を担当する機関としての無責任体制と当事者能力の欠如でした。そのためにこそ、旧動燃は核燃機構へと名称と組織を変更して再出発したはずだったのですが、ウラン残土問題が証拠物件として明るみに出したのは、旧動燃時代よりもひどくなっている核燃機構の無責任体制と当事者能力の放棄です。それにもましてひどいのは、監督官庁の責任放棄というよりも、官官癒着による責任担当の意思と能力の欠如です。
上記ホームページの「方面自治会が「和解案」を拒否」でも強調したように、本来なら文部科学省の核燃料サイクル研究開発課も、核燃機構の監督官庁つまりレフェリーとして、プレイヤーたる核燃機構の不正をただし責任をまっとうさせる立場にありながら、故・高木仁三郎氏のいわゆるプレイヤーとレフェリーが一体化した日本の原子力行政のまさに縮図で、むしろ核燃機構と呉越同舟の構造癒着に深く陥っています。とにかく、文部科学省の核燃料サイクル研究開発課の幹部たちが旧科学技術庁時代から、「方面地区のウラン残土は現地処理で」という方針で凝り固まっていたことは動かし難い事実です。
このため、私は国のイニシアティブにはほとんど期待していませんし、司法の命令を当事者たる核燃機構自身に遵守させるしかないと突き放して考えています。それでも国に何らかの役割を果たす余地があるとしたら、法治国家において国の機関が率先して法を守らないなどという醜聞を解消すべく、核燃機構と人形峠センターのある岡山県当局を交えて、最高裁決定で確定した3000立方メートルの撤去命令の法的責務を果たすべく、核燃機構の法定核専門施設たる人形峠センターへの搬入を迫る以外にないでしょう。

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