判決の要旨

原告 日本原子力研究開発機構

被告 鳥取県中部総合事務所長

主文

1 被告が原告に対して平成17年2月15日付けでした鳥取県立自然公園条例13条2項に基づく禁止命令を取り消す。

2 訴訟費用は被告の負担とする。

             

争点(1)「本件につき、訴えの利益が認められるか」

被告が「本件ウラン残土の搬入について未だ適法な届出がされていない以上、本件禁止命令が取り消されたとしても、原告が適法に本件ウラン残土を搬入することはできないから、訴えの利益がない」としたのに対して、原告は「回復すべき法律上の利益が存在する」と主張した。
 判決は、「届出を要するか否か、あるいは既に有効な届出がなされたか否かに関わりなく、本件禁止命令の法的効果が除去されていなければならないのであるから、原告が本件禁止命令の取消しを受けることにより回復すべき法律上の利益を有することは明らかである」と「訴えの利益」を認めた。

争点(2)「本件禁止命令の違法性」

(1)フレコンバック詰め残土の据置きと斜坑設置・埋め立てとの一体性

被告が両者は「一体の行為」であるとして禁止命令を発したのに対して、原告はそれぞれ「別個の行為」と判断すべきだとした。
 判決は、「本件フレコンバック詰め残土の据置きは、本件土地そのものの従来の形状を掘削などによって変更せず、本件フレコンバック詰め残土を本件土地上に置き、その周囲を遮水シートで覆うというものである。一方、斜坑設置及び本件ウラン残土の埋立ては、本件土地の地下に長さ約65メートルの斜坑を掘り、その中に本件ウラン残土を充填した後、コンクリートで閉鎖し、地表部分に法面整形及び緑化措置を施すというもの」で、両者の「工事の期間、規模、土地の形状に与える影響が大きく異なっている」。また、「それぞれの行為が行なわれる時期には大きな隔たりがあり」、両者は「別個のものと認めるのが相当である」。

(2)本件フレコンバック詰め残土の据置きを禁止した部分についての判断

判決は、「本件フレコンバック詰め残土は、551個のフレコンバックに袋詰めされた約290立方メートルの捨石であり、これを据え置くことが土地の形状変更に該当するとしても、その量及び態様によれば、同行為は、面積が200立方メートルを超えず、かつ、高さが5メートルを超える法を生ずる切土又は盛土を伴わない行為と認められる」。
 一方、県立自然公園条例13条1項6号により「土地の形状を変更する」行為は届け出なければならないが、「面積が200立方メートルを超えず、かつ、高さが5メートルを超える法を生ずる切土又は盛土を伴わない行為」については、届出を要する行為ではないので、これに対する「禁止命令」は「違法」である。

(3)斜坑設置及び本件ウラン残土の埋立てを禁止した部分についての判断

 被告が「斜坑設置及び埋立てが本件公園の風景に与える影響」として挙げている数々の理由のうち、まず「切土や盛土による大きな地形変更等を伴い、相当長期にわたって大規模な工事がされること」について、判決は「斜坑設置等に伴って大きな地形変更等が行なわれるとの事実は、風景を保護するための必要性を判断する際に考慮すべき事由として相当である」と認めた。
 しかし、「工事に伴う道路の使用や付随する工事等により道路の通行等に多大な支障が生ずること」については、「土地の形状を変更すること」に該当せず、「本件公園の風景に影響を与えるものではない」として否認した。
 つぎに、「本件ウラン残土を搬入することそれ自体が付近住民に「不安感」という共通認識を与えること」については、「本件ウラン残土の搬入そのものによって、自然環境が何らかの影響を受けることを認めるに足りる証拠はなく、被告の主張する「不安感」には、合理的な理由があるとは認め難い」と否認した。
 判決は、本件禁止命令が発せられた時点で、「斜坑設置等の工事に関しては、原告は、未だ準備段階にあり、工事を実施する状況にはなかったのであるから、土地の形状変更等の行為を「しようとする者」に該当すると認めることは困難」で「そのような者に対して発令された本件禁止命令は、必要性について大きな疑問がある」とした。
 さらに、判決は、本件禁止命令は「本件条例が予定している命令の中で最も強力な処分」であって、風景への影響を小さくするため工事の縮小や期間の短縮などの措置を施す余地がなく、「制限命令又は措置命令によっては風景保護の目的を達成し得ないとの主張立証はなく、必要な限度における処分であったのか疑問というほかない」とした。
 以上の諸事情を総合して、本件禁止命令のうち斜坑設置及び埋立てを禁止した部分は、「裁量権を逸脱したものとして違法と認められる」。

(4)結論

以上によれば、本件禁止命令は、「全体として違法であり、取消しを免れない」。

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