榎本益美さんが控訴審で

200万円の損害賠償を追加請求

 原子力機構の証拠隠しと偽証行為に対して

   (2006年1月27日、第5回口頭弁論)

 

1、原子力機構の証拠隠しと偽証行為を暴く

榎本益美さん訴訟の控訴審第5回口頭弁論は2006年1月27日、松江高裁で行なわれ、一審原告と裁判所を欺いた日本原子力研究開発機構(旧核燃)の証拠隠しと偽証行為をめぐって、反論のための資料の作成に余計な労力・費用・精神的苦痛をかけさせたとして、榎本さん側が200万円の損害賠償を追加請求しました。
 まさにマンション等耐震強度偽造事件のウラン鉱山用地版で、榎本さん側が裁判所に提出した新証拠の図面をめぐって、さすがの原子力機構も逃げ場がなくなって追い詰められ、前回の口頭弁論で即座に否認した発言を翻し、その原図の作成にあたったことをついに認めました。
 しかし、ウソの尻拭いをはかる原子力機構は、その原図をウラン採掘当初から放置発覚後のウラン残土対策まで、自ら基本図面として使用してきたにもかかわらず、いまになって原図は公図を参酌したものではなく、近隣土地の位置関係を正確に反映したものでもないなどと、天に向って唾するような無責任極まることを言い、榎本さん側の追加請求を棄却するよう求めました。
 榎本さん側は原子力機構に3月下旬までに最後の反論を出し、控訴審は4月19日に結審の予定です。フレコンバック詰めウラン鉱石残土290立方メートルは榎本さんの土地に仮置きされていたという自明の前提が、原子力機構の証拠隠しと偽証行為によって、一審判決では損害賠償の請求ともども否認されましたが、今回の新証拠はこの一審判決を覆す決定打と私たちは確信しています。

2、今回の新証拠は榎本さんの主張を裏付けた

 一審原告の榎本さんの代理人は今回提出の「準備書面(2)」(1月24日付け)で、前回提出した新証拠の甲83の図?(3)と甲84の図?(4)の出所について、「これらの地図は、ウラン採掘坑道と地権者名入りの原図に加筆したものであって、少なくとも、その原図は、ウラン採掘の事業主体であった旧動燃(旧核燃の前身)しか作成することができない図面だ」と断定しました。
 つぎに、この新証拠のうち甲83の図?(3)〔2005年11月2日、第4回口頭弁論で提出の本ホームページ図面参照〕には、ウラン残土堆積場の各土地の所有者の名前が面積とともに記載されていることから、「旧動燃は、採掘当時から各土地の所有者の名前を把握し、土地契約等を結んでいたことが明らかである」としています。
 特に注目すべきは、フレコンバック詰め290立方メートルの土地(坂根314−3)、および、その上方にある下1号坑口近くの旧貯鉱場の位置関係です。榎本さんは一審以来、フレコンバックの土地は自分の土地(坂根314−3)で、その上方の旧貯鉱場は原田敏明氏の土地だと一貫して主張してきましたが、原子力機構は榎本さんの314−3が旧貯鉱場にあり、フレコンバックの土地からは大きく離れているとの反論と図面を提出し、訴訟を長引かせ混乱させました。
 しかし、新証拠の図?(3)は、旧貯鉱場の土地に「原田米造」(原田敏明の義父)の名前を記載しており、榎本さんの主張が正しかったことを原子力機構自身の資料で疑う余地なく証明したのです。かくして、「図?(3)と一審原告の図面は、ほぼ一致する」「図?(3)は、一審判決を覆す決定的な証拠であることを示すものである」との結論に落ち着いたわけです。
 しかも、図?(3)は、2号抗付近の財産区にある「山崎毅」「近藤好雄」(近藤明の父)「遠藤浅寿」(遠藤幸人の父)管理の土地についても、一審以来榎本さん側が提出した図面に合致し、上記の旧貯鉱場並びにフレコンバックの土地との位置関係をめぐる榎本さんの主張を補強しています。
 ところが、原子力機構がこれまで提出した虚偽の図面では、榎本さんの314−3の土地が旧貯鉱場にせり上がったのに連動して、旧貯鉱場が財産区の土地のあたりまでせり上がり、その結果として財産区の土地が隣接の川上地区にまで越境ないしは宙に浮いて消滅(?)してしまう、という決定的な矛盾を露呈していたのです。

3、証拠隠しと偽証は故意の不法行為で責任重大

 原子力機構はフレコンバックの土地が榎本さんの土地だという自明の事実を故意に打ち消すため、ウラン残土の撤去協定書が結ばれた当時にさかのぼって、ささいな会合のメモや議事録まで実に膨大な資料をまことしやかに証拠として提出しながら、ウラン採掘当時からウラン残土対策に至るまで地権者との賃貸借契約をはじめ基本資料として使用してきた、この最重要な図面を提出せず隠蔽してきただけではありません。
 この図面があれば双方が土地の位置関係で争うこともなかったのに、原子力機構はわざわざ元職員の松本龍雄・測量士や倉吉市の藤田義彦・土地家屋調査士を使い、膨大な費用をかけて虚偽の測量と図面の作成を行なわせました。これが国民の税金の無駄遣いであることは申すまでもありません。しかも、その偽証行為の加担者たる藤田調査士に本控訴審でも「意見書」(乙91)を出させて、ウソの上塗りをしてきたのだからたまりません。
 榎本さんの代理人は今回の「準備書面(2)」で、これは「一審原告と裁判所への明白な故意による偽証工作と言わざるを得ず、それによって原告と裁判所を欺し、振り回した法的責任(不法行為責任)及び道義的責任は、極めて重大であると言うべきである」としています。さらに、この「故意による証拠隠しと虚偽証拠の作出・証拠提出」は、「旧動燃時代の高速増殖炉『もんじゅ』や東海再処理工場などの火災事故の際に露呈したものより、さらに悪質な再現であり、到底、許されるものではない」と批判して、原子力機構に謝罪と200万円の損害賠償の追加を求めました。
 この原子力機構の証拠隠しと偽証行為のため、榎本さんは関係者の参加による現地調査や図面の作成など余計な負担を背負わされ、「それらに費やした労力や蒙った精神的苦痛等一切の財産的損害・精神的な損害」は少なくとも200万円は下らないとして、これまでの160万円(うち60万円は弁護士費用)から360万円へと損害賠償を拡張して請求し直しました。

4、原子力機構は新証拠の原図の作成を認めたが ・ ・ ・

 一方、原子力機構は一審原告が提出した新証拠の甲83の図?(3)を前回の口頭弁論で即座に否認しましたが、今回の口頭弁論に向けて提出した「準備書面」(1月20日付け)で前言を翻し、甲83は一審被告の原子力機構が昭和33(1958)年度から同37(1962)年度にかけて、当時職員だった松本測量士に作成させた図面が原図であることを認めました。さすがの原子力機構もウソをつき通せないと観念したのでしょう。
 その原図は、松本測量士が当時作成した「東郷鉱山東郷地区総合図」(乙98)と借地予定地の特定のための土地測量による図面(乙99の2)で、後者の乙99の2の図面部分を前者の乙98に転写したのが甲83の元となった図面だというのです。
 要するに、新証拠の甲83は原図ともども原子力機構自身が作成し、ウラン残土の放置発覚後もその対策に使用し今日まで保存していたことを認めたのです。それでは、いったい、なぜその肝心の重要な資料を原子力機構は隠していたのか。むろん、それはこの資料が表に出れば榎本さんの訴えを認めざるを得ないからですが、原子力機構はこの過去の自己の貴重な図面を伏せて、でっち上げの図面を作成するため虚偽の測量までして偽証の暴挙に出たのです。
 しかも、原子力機構はどこまでも不誠実かつ不謹慎や組織であって、甲83の図面が自分の作成によるものだと認めながら、なお言い逃れをしようとするのだからたまりません。すなわち、「上記借地予定地の特定のためになされた立会測量においては、公図が参酌されることもなく、また、乙第99号証の図面部分を乙第98号証へ転写するに当たっても、単にパンタグラフを使った鉛筆書きによりなされたにすぎないというのであるから、甲第83号証が近隣土地の位置関係を正確に示しているとは到底言えないものである」と。
 自らウラン採掘及びそれ以後の借地契約やウラン残土対策のためにさんざん使ってきた基本図面を、いまになっていい加減なものであるとするこの準備書面の言い草は、国の原子力行政に責任を持つ国策の組織の言葉とは到底思えません。それならば、これまでのウラン採掘以降の借地契約もウラン残土対策も、すべてがあやふやで法的な根拠を欠いた実にいい加減なものだったのか。これは途方もない醜聞に発展します。

5、ウソの尻拭いと無責任な言い逃れは許されない

 のみならず、原子力機構は偽証行為の加担者の松本龍雄・測量士に自らの責任を押し付けるべく、この元職員の測量士に「陳述書」(乙100)を執筆させ提出していますが、彼は「その際、私が公図と照らし合わせることはしないのかと質問したところ、当時の原子燃料公社(原子力機構の前身)嘱託で用地担当の澤輝政氏から、ここに地権者の二人がおられるのだから、この方たちの確認に従えばよい、口を挟むことのないように、と強く叱責されました」などと、これまた何とも無責任なことを書いて言い逃れに余念がない有様です。
 さらに、もう1人の偽証行為の加担者たる倉吉市の藤田義彦・土地家屋調査士は、榎本さん側が新証拠をもとに一審原告図面が原子力機構自身の資料(甲83)によって立証されたことを示した甲86の重ね合わせ図について、(本件訴訟には直接関係のない)他の土地の一部に矛盾が生じるなどと揚げ足を取り、「甲83号証の範囲が決められた経緯は知らないが、仮に同図上に企画された線が管理または利用の範囲を示すものであったとしても、前記の状況からして公法上の土地の筆界を示すものとは考えられない」などと、原子力機構の偽証行為の尻拭いに一役買って出ています。
 まさに今日問題のマンション等耐震強度偽造事件のウラン鉱山用地版と言うべく、原子力機構が自己の証拠隠しと偽証行為に重大な責任を持つのは当然として、金で雇われて原子力機構の偽証に加担・協力するこれら測量士や土地家屋調査士もまた、この偽証の責任を分担する者で あることを決して忘れてはならないし、これから厳しく批判され追及されることは避けられません。
 全国的にも注目され県民の関心が非常に高いこの問題で、自ら金をもらって原子力機構の偽証に加担・協力しても裁判の場だけであって、世間からは透明人間のように隠されて目に見えないはずだ、と考えたら大間違いです。以下、偽証行為の当事者と加担・協力者を裁判所に提出され公開された文書をもとに挙げておきます。

◆ウラン残土訴訟における証拠隠しと偽証行為の当事者

独立行政法人 日本原子力研究開発機構
(本 部)
〒319-1184 茨城県那珂郡東海村村松4番地49
       電話:(029)282-1122

   (人形峠環境技術センター)
        〒708-0698 岡山県苫田郡鏡野町上齋原1550
       電話:(0868)44−2211    フリーダイヤル:(0120)800-595
        FAX:(0868)44−2502

◆ウラン残土訴訟における偽証行為の加担・協力者
    1、有限会社 松本測量設計事務所 松本龍雄
       〒682−0021 鳥取県倉吉市上井町2丁目6番地8
       電話:(0858)26−2925
 2、土地家屋調査士 藤田義彦
 〒682−9816 鳥取県倉吉市駄経寺町2丁目15番地1
        電話:(0858)22−1811

    

 小出裕章さんが「再々意見書」で原子力機構を痛烈批判

「ウラン残土に危険がないと言うなら、原子力機構

の職員4400人が1立米ずつ所持したらどうか」

 榎本益美さん訴訟の控訴審で一審原告側が昨年末に提出していた小出裕章さんの「再々意見書(控訴審)」(11月28日、甲89号証)が、1月27日の第5回口頭弁論で正式に受理されました。その内容は簡潔明瞭なので読者の皆様にはぜひ全文を読んでいただきたいと思います。
 そのなかで、小出さんは最高裁で撤去命令が確定したウラン残土3000立方メートルの未撤去部分2710立方メートル(榎本さん訴訟でいう第2残土)について、安全だと言うなら原子力研究開発機構(核燃料サイクル開発機構と日本原子力研究所を統合して昨年10月に発足)の職員4400人が1立方メートル弱ずつ引き取ったらどうか、とつぎのように提案しています。
 「一審被告によれば、第2残土は何の危険もなく、法令で何の規制も受けないというものであるから、職員一人ひとりが1立米弱ずつ残土を所持したらどうだろう。庭のある人は庭におけばいいし、マンション住まいであればベランダにおいても邪魔にならないだろう。何と言っても、一審被告は一審原告の私有地に1万6000立米の残土を置き去りにし、何の迷惑も与えないと言っているのである」と。
 ウラン残土の放置発覚から19年目になりますが、ウラン残土には何の危険もなく放射線防護上も現状のままでいいと言い続けている原子力機構は、それならば小出さんの上記の提案を受け入れたらどうか、と私たちも言いたくなる最後のぎりぎりの言葉です。


再々意見書(控訴審)




              2005年11月28日


大阪府泉南郡熊取町南山の手台9の10

             小出 裕章

T. はじめに

一審被告は10月21日付で「準備書面」を提出しているが、それに対する意見書を書くことについては正直言って迷いがあった。書くことが難しいわけではない。余りにも馬鹿らしいと思ったのである。
 一審被告、核燃料サイクル開発機構は、この10月1日に日本原子力研究所と統合し、日本原子力研究開発機構になった。もともと、その前身である動力炉・核燃料開発事業団も、さらにその前身である原子燃料公社も国によって設立された組織であり、こと原子力に関するかぎり常に最先端の研究・開発をしながら、それに責任を持つ組織であったはずである。科学的な考え方についても充分に訓練され、分かっているはずの組織である。その彼らの10月21日付けの「準備書面」は余りにお粗末で、呆れるのを通り越して悲しくなった。しかし、裁判である以上、最新で最良の科学的な知見に基づいた判決が下されることを願い、控訴審における2005年3月9日及び8月22日付意見書(甲75・79)に続いて、この再々意見書を書くことにした。


U.科学というもの

一審被告の10月21日付け準備書面は「第2 本件ウラン残土に起因する放射線による人体影響の有無に関する立証責任の所在について」で以下のように述べる。

3 なお、一審原告は、「低レベル放射線の定量的な「危険度」については、現時点の科学で明確にできない部分がある」(一審原告準備書面9頁)とする。
一審原告の上記主張は不分明であるが、原時点の科学に照らし、相当程度の部分について、低レベル放射線被曝の定量的な「危険度」について立証できるが、わずかな部分については立証し得ないと主張するのであるならば、上記相当程度の部分について一審原告が立証責任を負担すべきことは当然であるし、そもそも、放射線による人体影響の有無は、現在の科学技術水準、科学的知見に照らし判断されるべき事柄であるから、現時点の科学で明確にできない部分があるというのであれば、これを肯定することはできないというべきである。


一体何度同じことを説明すればすむのであろうか? 一審被告は一審原告の主張を「不分明」というが、私はこれまでの意見書でも度々、低レベル放射線被曝の危険性の内容について、これ以上明確に説明しようがないほどにはっきりと説明してきた。また、前回の8月22日付け意見書では、繰り返しになることを断りながらも、現時点での科学で明確になっていることと、定量的な評価が残っていることを峻別して述べた。それを簡潔に再度述べるならば以下の通りである。
 いわゆる急性障害である確定的影響についてはしきい値があり、一審原告と被告の間で争いがない。また、いわゆる晩発的障害である確率的影響も生じ、50mSv程度の被曝までは被害の発生頻度が被曝量に比例する。そして、放射線に被曝すれば、生命体の細胞に傷が付くことは物理学的、化学的、生物学的に明白であり、仮に修復機構が働いたとしても100%有効であることはあり得ないので、どのように低いレベルの被曝であっても必ず影響はある。現時点の科学で確定できていないことは50mSv以下の被曝領域において、影響の発生頻度が被曝量と比例するのか否か、比例しないのであれば、どのような線量効果関係にあるのかということだけである。
 そして、影響の発生頻度が被曝量に比例するという仮説が「しきい値なし・直線仮説」(LNT仮説)である。その直線モデルが過小評価であることを示す実験データもあるし、疫学データもある。また、一方、一審被告がいうように逆のことを示すデータもある。しかし、現時点では科学的に断言できないがために、現時点での科学的なデータから推論できるそれなりに素直な仮説として「しきい値なし、直線モデル」が国際的な組織によって採用されているのである。そして、それに基づいて、日本を含めた各国の法令が被曝についての限度を定めて、労働者と一般人を守ろうとして来たのである。私自身は、これまでの意見書で根拠を添えて述べてきたように、LNT仮説どころではなく、低線量での被曝は高線量での被曝に比べて単位線量あたりの影響が大きいという「超直線仮説」が正しいと思う。しかし、いずれにしても、放射線に被曝しても何の影響もないなどという主張は科学的にありえない。
 一審被告は「しきい値なし、直線仮説」があくまでも仮説であると力説し、低線量での影響は科学的に立証されていないと主張している。そのため、一審被告は電力中央研究所の報告(乙第95号証)、フランス医学アカデミー及び科学アカデミーの報告(第96号証)、放射線影響協会の報告(乙第97号証)などを引用している。しかし、一審被告が援用しているこれら各報告書にしても、低レベルの被曝には影響がないなどという結論は、当然のことながら一言も書いていない。疫学という学問は統計学に基礎をおいており、調査対象が増え、観察期間が延びるに従って結論の確かさは増えるが、それでも常に結論が間違いである可能性をも抱えているのである。これまでの意見書でも度々述べたように、すべてを完璧に明らかにする力を持たないことが科学の基本的な属性でもある。科学とは実証性を旨としながら、実証できない事柄については、あくまでも最新で最良の科学的な知見に基づき仮説を立て、合理的な推論をしながら一歩一歩進むのである。それにも拘わらず、完璧に立証されなければ被害がないかのように一審被告は主張している。自分に都合の悪い仮説は、それが如何に合理的であっても認めないという点で誤り、さらに自分の都合のいい推論はそれが実証されていなくてもあたかも事実であるかのごとく主張するという点で、一審被告の主張は二重に誤っている。原子力研究の最先端にいるべき一審被告が、これほどまでに科学の基本について理解を欠如していることはおよそあり得ないことと言わねばならない。

V.卑劣な人々

科学は形容詞を避けるべきものであるし、裁判も本来であれば冷静に事実の存否・有無を争うべきものであろう。「意見書」に形容詞を使うことも本来ならば適切でないだろう。しかし、私はどうしても一審被告に対して「卑劣」という形容詞を使わざるを得ない。
 彼らは、放射線に被曝することが、仮にそれが低線量での被曝であっても影響があることを十二分に知っている。科学に携わる、それも原子力に携わっている専門家にそれが分からないはずがない。放射線に被曝することを望む人など全くいない。自分の庭に放射能のごみが捨てられていれば、誰だってどけてくれと思うであろう。それでも、一審被告は低線量での被曝は影響がないのだから、一審原告の主張には理由がないと主張する。しかし、もし彼らが本当に低線量の被曝は影響ないと信じ、そして、それが事実であるならば、何故17年にもわたって、かつ今日に至るも、岡山県など関係自治体を説得できないのか?
 その上、一審被告は、並行して進められてきた自治会訴訟で撤去命令が確定した第一残土を日本国内ではどこにも持ち出すことができず、ついに米国に搬出した。一審被告は、従来は単なる「捨て石」で何の危険もないと言ってきた残土を突然「準鉱石」だと言い、「商業的」な目的で「製錬」してウランを取り出すのだと言い出した(注1)。ただし、第一残土の平均ウラン含有量は0.03%U、全体で290立米、重量にして500トンである(注2)。結局、含有されているウランを100%取り出したとしても150kgにしかならないし、ウランの価格を33$/ポンドとしても高々100万円にしかならない。ところが、この「商業的」な取引きとされる「製錬」のために一審被告は6億6000万円も支出するのだと報じられている。このようなものが「商業的」な取引きといえないことは誰の目にも明らかであり、一審被告が行ったことは自らは始末の付けられなかったごみを他者に押しつける行為で、国境を越えたことを取り上げれば「公害輸出」と呼ぶべきものである。私は彼らと同じ日本人であることが恥ずかしい。
 ちなみに、残土が搬出された土地は米国ユタ州ホワイトメサにあるインターナショナル・ウラニウム・コーポレーションで、そこは米国先住民ナバホ族、ホピ族などの土地である。この製錬所は既に過去6年間、製錬事業をしておらず(注3)、「製錬」を理由に送られた残土は実際には製錬されずに投棄される可能性がある。もしそうなれば、単なるごみの押しつけであることが明白になる。しかしユタ州は、ユタ州が世界の核のごみ捨て場になることを嫌っており、今回の残土をそのまま環境に捨てることは許さないだろう。そのため、搬入された残土は12月5日から製錬作業に入ると伝えられている。ところが、仮にこの残土が「製錬」されて、わずか150kgのウランを取り除かれたとしても、残りの500トンは化学的にはより一層厄介な鉱滓となって先住民の土地に捨てられることになる。


W.今、為すべきこ

自治会訴訟で撤去命令が確定した残土は第1残土の他、2710立米分の第2残土がある。もちろん一審被告はその残土についても、全く危険がないと主張してきた。もし、本当に彼らがそう信じているのであれば、私は一つの提案をしたい。
 一審被告は既に述べたように去る10月に日本原子力研究開発機構に統合し、職員数は約4400人になった。一審被告によれば、第2残土は何の危険もなく、法令で何の規制も受けないというものであるから、職員一人ひとりが1立米弱ずつ残土を所持したらどうだろう。庭のある人は庭におけばいいし、マンション住まいであればベランダにおいてもたいして邪魔にならない。何と言っても、一審被告は一審原告の私有地に1万6000立米の残土を置き去りにし、何の迷惑も与えていないと言っているのである。ただし、本来であれば一審被告の中でも本件に関する責任の重さに応じて所持する量を決めるべきであろうし、間違った国策を押しつけてきた国の関係者とそれにすり寄った学者も責任をとって「何の危険もない」残土を所持すべきであろう。
 一審被告は10月21日付け準備書面で相変わらず「一審被告は鉱山保安法令などに則り所用の管理をしている」と書いている。しかし、すでに度々指摘してきた様に、問題の土地は被告の土地でない。どうして他人の土地、それも一審被告が地権者から立ち入りを禁じられている土地で、放射線に関する所用の管理ができるのか? 被告が地底から掘り出し、野ざらしにしているウラン混じりの残土からは放射線が出ているし、ラドンが逃げ出してきて周辺に汚染を広げている。物理学的に疑うことのできない事実である。そのようなものを、間違っても、嫌がる他人の土地に置き去りにしたり、無関係な別の人の土地に持ち出して捨てるべきでない。


                                      以上


【注】

1) 核燃料サイクル開発機構、「ウラン鉱石を含む集積物(290m3)の海外輸送、2005年8月

2) Milling Agreement of Natural Uranium Ore Material(核燃料サイクル開発機構とInternational Uranium Corporation との契約書、2005年8月25日発効)

3) The Salt Lake Tribune、Japan sending trainloads of toxins to Utah、10/26/2005 02:10:44 PM

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