榎本益美さん訴訟の控訴審
榎本さんの弁護団が核燃の図面の致命的誤りを暴露
核燃はフレコンバック詰めウラン残土の影響を否定
報告が遅れましたが、榎本益美さんのウラン残土撤去訴訟の控訴審は1月28日、広島高裁松江支部で第1回の口頭弁論が開かれ、原告側が控訴理由書を提出しました。
このなかで、榎本さんの弁護団は、一審の鳥取地裁が採用した核燃の図面の致命的な誤りを暴露するなど、地裁の判決に全面的な反論を展開しました。
一方の核燃は控訴理由書で、フレコンバック詰めウラン残土の放射線の影響によって、原告の榎本さんの土地の利用が妨げられていない、などの主張を展開しました。
1、榎本益美さんの控訴理由書
まず、榎本さんの弁護団は、最高裁決定で3000立方メートルのウラン残土の撤去命令が確定しているのに、そのうちのフレコンバック詰め290立方メートルの撤去を命じたに過ぎない鳥取地裁の一審判決に対して核燃が控訴すること自体、控訴権の濫用であり自らの控訴を即刻取り下げるべきだと主張したうえで、以下の論点を具体的に展開しました。
@フレコンバックが榎本さんの土地にないとの核燃の図面の致命的な誤り
この訴訟の第1の争点だったフレコンバック詰めウラン残土が榎本さんの土地にない、という核燃の主張と図面を採用した一審判決には事実誤認があるとして、その致命的な誤りを指摘しました。
まず、核燃が依拠した平成3年の国有里道(いわゆる赤線)の境界確定協議書は、個人所有地相互間の境界を確定したものではなく、方面地区の住民の証言は榎本さんの図面の正しさを裏付けている、という事実も重要です。
だが、何と言っても核燃を支持した一審判決にとって致命的なのは、核燃自身が提出した書証の地図によって、核燃の恣意的かつ意図的な図面操作の致命的な誤りが、図らずも露呈してしまったということです。
この説明は図面がないと分かりにくいが、核燃は公図の赤線上のa、b、c、dの各点と上記境界確定協議書の実測図上のA、B、C、Dの各点がそれぞれ対応している、として机上の操作で図面を作成しましたが、その対応の根拠を何ら具体的に示していないだけではありません。
まことに致命的で決定的なことに、核燃が堆積場の各所有者と交わした平成2年の契約書の地図によると、実測図のA点は公図のa点より北北東方向に約18メートルも離れた地点にありました。この地点と実測図のA点を重ね合わせてみると、核燃にとっても意外や意外、まさに榎本さんが提出して住民が支持した図面になるのです。
泥棒を捕らえてみればわが子なり、との諺ではありませんが、核燃は一審でじゃぶじゃぶと書証で地図を出して、自らの正しさを立証しようとしたつもりが、(机上の操作)上手の手から水が漏れてトリックがバレてしまい、皮肉にも相手の図面の正しさを逆に証明してしまったのです。
核燃の図面では、ウラン残土堆積場の敷地境界を示すトラロープの内側にあるはずの各地権者の所有地が、トラロープの外側にはみだしてしまうか宙に浮いて消えてなくなってしまう、という著しい矛盾はすべてこの核燃の図面操作のトリックの無理からくる産物だったのです。
Aフレコンバック以外の残土は土地に附合し核燃の所有ではないとの判決の批判
この訴訟の第2の争点はウラン残土の帰属の問題です。一審判決によると、フレコンバック詰め290立方メートルの残土は外形上も土地から区別でき、核燃が自らの責任で撤去することを前提に、他の残土と分離させ、独立の動産としたものであるから、その所有権は核燃にあるとしました。
一方、他の2710立方メートルの残土は、外形上も元々存在した土地と異なるところはなく、社会経済上当該土地と一体となり、土地に附合したと認められるので、その所有権は核燃ではなく土地の所有者にあるとしました。
これに対して、榎本さんの弁護団は「附合」とは法的評価概念であり、核燃は放射能測定に基づいて撤去すべきフレコンバック以外の残土の特定を行っていて、その土地から客観的・物理的に分離可能で、この分離を認めることが社会経済的にも妥当である、と批判しました。
さらに、一審判決がフレコンバック以外の残土は「有用性のない無価値な土砂等」で「経済的価値」はなく「外形上も元々存在した土砂と異なるところはない」とした点についても、「色も臭いもない。混ざったり、一見して付着したり、しても分からない」という厄介な特徴を持つ「人体に有害な放射能を含んだ土砂」であって、このような有害性をまったく無視したきわめて不合理な判断である、と正当にも批判しました。
ここから、フレコンバック以外の残土も、土地と附合していると評価することができず、逆に物理的にも社会経済的にも分離して安全に管理するのが妥当で、核燃は発生者としてこれらの残土を撤去すべきだ、との榎本さん側の主張が導き出されます。
(ところで、鳥取地裁の山田陽三裁判長の上記の判断が、やがて別件の方面自治会訴訟において最高裁決定でウラン残土の撤去命令が確定したあと、同じこの山田裁判長と両陪審により、フレコンバック詰め残土は「土地と一体化」した「動産」なので、核燃が計画する麻畑地区に搬入しても県立自然公園条例による知事への届出は不要、と先走った決定を下し、核燃の麻畑搬入に道をつけるのに利用されたのは、まことに遺憾なことです)
Bウラン残土が榎本さんの土地の利用を妨害しているとの主張
一審判決が榎本さんの土地の位置の認定を誤っていることは先述の通りです。それでも、判決はフレコンバックの残土がその近隣の榎本さんの土地の利用を妨害していることを認めましたが、フレコンバック以外の(周辺の)残土により榎本さんの土地の利用が妨害されているとの主張は否定し、それらの残土は土地に附合しているので核燃に撤去責任はないとしました。
これに対して、榎本さんの弁護団は、フレコンバック以外の残土も人体に有害であり、土地への附合は認められないとして、一審判決を批判しました。また、この土地の利用の妨害の主張の一部を権利濫用に含めて否定した一審判決も、権利濫用の法的判断を誤っていると反論しました。
C榎本さんの請求は権利濫用には当たらないとの主張
一審判決は、榎本さんが方面地区の清水滋雄さんから取得した土地(フレコンバックの大半があると主張している土地)については、核燃による権利濫用の主張を否定しましたが、榎本さんが訴訟の途中に同じく方面地区の近藤明さん(現区長)から取得した土地についての請求は、権利濫用に当たるとの判断を示しました。
これに対して、榎本さんの弁護団は、別件の自治会訴訟の最高裁決定によって、上記の2つの土地のウラン残土を含む3000立方メートルの残土撤去の法的義務が確定した現時点で、権利濫用論を適用するのはそもそも誤りだと主張しました。
さらに、核燃は前所有者の近藤明さんから撤去を求められれば、そこの残土の撤去を拒否することはできない地位にあり、近藤明さんも悲願である残土撤去への切実な思いを託して、その土地を榎本さんに譲渡したものであるから前所有者の意思に合致する、として権利濫用論を否定しました。
D榎本さんがウラン残土により精神的損害を被ったとの主張
一審判決は、ラジウムやラドンがウラン残土から発生し、それが周辺に拡散している可能性は認められるが、これが榎本さんの生活環境や健康等に影響を及ぼしていると認める証拠はなく、これにより精神的障害を被ったと認めることはできないとして、慰謝料100万円の請求を斥けました。
これに対して、榎本さんの弁護団は、京大原子炉実験所の小出裕章助手の意見書に明らかなように、ラドンをはじめウラン残土の放射能は方面居地区にまで汚染を広げており、榎本さんがそれらの測定に協力し調査結果を知るに及んで、精神的な圧迫と健康への危惧を抱いたと指摘しました。
また、放射能被曝による危険を否定できない以上、たとえ現段階でその被曝による結果が発現していないとしても、榎本さんが長年にわたり生命・身体に有害な影響を日常的に心配して生活しなければならなかったこと自体、明らかに精神的な苦痛に該当するとしています。
榎本さんは核燃の前身の原子燃料公社によるウラン採掘の作業に従事し、いまから振り返れば放射能の影響と思われる脱毛や鼻血などのほか、胃に8カ所も穴が空くほどの重度の胃潰瘍で緊急入院して手術する経験もしており、なおさら放射能の影響への危惧を強く抱いている、とも強調しました。
2、核燃の控訴理由書
核燃の控訴理由書は次の3点に要約されます。
@フレコンバック詰めウラン残土により榎本さんの土地の利用が妨害されているとは言えない